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ヘレンベルガー・トア — 200年の長屋門、再生の記録

2026.07.20 / Horibe Associates

Horibe Associates

PROJECT REPORT

ヘレンベルガー・トア 夜景外観
竣工写真:夜、庭側より建物を望む 撮影:三木夕渚

RENOVATION OF A 200-YEAR-OLD NAGAYAMON

ヘレンベルガー・トア

HERRENBERGER TOR — 蔵垣内の長屋門、再生の記録
所在
大阪府茨木市 蔵垣内
用途
ドイツワイン商社 ヘレンベルガーホーフ様 新施設
建物
約200年の歴史を持つ長屋門の改修
設計監理
株式会社 Horibe Associates

茨木市蔵垣内にあるドイツワイン商社ヘレンベルガーホーフ様の新たな施設「ヘレンベルガー・トア」の設計監理を担当しました。建物は、約200年の歴史を持つ長屋門です。初めて現地を訪れたとき、まず目を引いたのは、丁寧に手入れされた庭園でした。この緑を室内へ引き込み、落ち着いた雰囲気の中で素材同士が響き合う建築をつくりたいと考え、計画をスタートしました。

CONCEPT

言葉に宿るこだわり

オーナー様のヒアリングから見えてきたもの

初回のヒアリングで印象に残ったのは、オーナー様のこの施設に対する熱量でした。大まかなイメージだけでなく、計画の初期段階から細部の納まりに至るまで、一つひとつに明確な考えと理由がありました。

CLIENT’S VOICE — ヒアリングでの言葉
  • ”  キッチン前は目地のない、さっと拭き取れる素材にしたい
  • ”  埃が溜まらないよう、ルーバーは縦方向に
  • ”  限られた空間だからこそ、人が気持ちよく行き交えるよう、角はできる限り丸く

その言葉の端々から、この施設に対する強いこだわりが伝わってきました。私たちが目指したのは、古いものに新しいものを合わせることではなく、200年の時間を刻んできた建築と現代の素材が、互いを引き立てながら自然に響き合うことでした。

ダイニングより庭を望む
ダイニングより庭を望む 撮影:三木夕渚
縁側の窓から望む庭園
縁側の窓から望む、手入れの行き届いた庭園 撮影:三木夕渚

断面アイソメトリック図

SECTIONAL ISOMETRIC

既存レンガ塀と同系色のタイルを室内に引き込み内外の連続性を生み出すことで、限られた空間に広がりを与えます。
艶のあるテクスチャーのタイルが庭の緑を反射し、四季の変化を室内へと届けます。艷やかなカラーステンレス、緑を取り込み空間を広げる大きな出窓。それぞれの素材が呼応し合い、豊かなひとつの空間をかたちづくっています。

MATERIAL MARIAGE

マテリアルのマリアージュ

素材選びの舞台裏

設計を進めていた時期は、ちょうど建築資材価格が大きく高騰していた頃でした。実施設計が完了してからもコスト調整は続き、何度も仕様を見直しました。それでも、この空間の質だけは落としたくなかったため設計者だけで判断せず、メーカーのショールームへ足を運び、担当者の方々と打ち合わせを重ねながら、納得できるまでサンプルを取り寄せて一つひとつの素材を選び抜きました。

厨房まわり
厨房ディテール
01|厨房まわり

厨房前には、機能性を優先して目地のないカラーステンレスを採用。隣には既存のレンガ塀から着想を得た、芳醇な赤ワインを思わせる艶やかなタイルを選んでいます。大きなピクチャーウィンドウが切り取る庭の表情がタイルに映り込みます。

大判メタリックシート
タイルと床の色合わせ
02|ステンレスとメタリックシート

カラーステンレスについては国内主要メーカー3社から気になる色柄をすべて取り寄せ、質感や光の反射を比較しながら検討しました。家具や天井には重量やコストの面からステンレスを用いることが難しかったため、国内で入手できるほぼ全てのメタリック調シートを各メーカーから取り寄せ、候補を絞った後はショールームへ足を運び、約1メートル四方の大判サンプルでカラーステンレスとの調和を確認しました。

現場で調合
調合後の変化
03|床の色 — 最後まで決まらなかった一色

床はコンクリート土間に表面強化材を施工する方法を採用しましたが、その色だけは数多くの標準色から選び切ることができませんでした。そんな時オーナー様から「標準色で決めるのではなく、この空間に一番合う色を調色して探してみたら」という一言をいただき、「そこまでこだわるなら、とことんやってみよう」と背中を押されました。すぐにメーカーへ相談すると、担当者の方が現場まで足を運んでくださり、何度も調色と試し塗りを繰り返しながら、ようやくこの空間にふさわしい色へとたどり着きました。標準色を選ぶだけでは決して生まれなかった、空間全体を静かにつなぐ床の色です。

※アクアカラー(ダークブラウン+ブラック調色)/AFJ株式会社

TECTA M21 ダイニングテーブル

04|TECTA M21 ダイニングテーブル

ダイニングテーブルには、ドイツ・TECTA社のM21(ウォールナット)を採用。バウハウスの思想を現代へ受け継ぐ数少ないメーカーで、装飾ではなく機能から美しさを導き出す考え方は、この建築で大切にしてきたことと重なります。天板はジャン・プルーヴェが描いた曲線から着想を得て生まれ、その曲線が人と人との距離を自然に縮めます。

ワインに料理とのマリアージュがあるように、建築にもマテリアル同士のマリアージュがあります。一つひとつの素材が優れているだけでは、豊かな空間にはなりません。木や石、鉄、左官など、それぞれが持つ質感や色、光の反射が互いを引き立て、響き合うことで初めて、その場所にしかない空気が生まれます。

しかし、その繊細な調和は、たった一つの要素でも簡単に崩れてしまいます。デザインされていないコンセントプレートや剥き出しのエアコン、洗剤のボトルなど、空間に馴染まないものが入り込むと、それまで積み重ねてきた美しい響きは失われてしまいます。

だから私たちは、素材の組み合わせだけでなく、納まりやディテール、ビス一本の見え方にまでこだわります。そうした細部への積み重ねが、言葉では説明できない心地よさを持つ建築につながると考えています。

MATERIAL MARIAGE

壁の出隅の曲線

匠と人の縁がつないだ仕事

放電加工前に熱で焼け変色した
カラーステンレス
最初の試みは熱で焼け、
変色してしまった。
ワイヤ放電加工で生まれた美しいR形状
水中でのワイヤ放電加工で、
美しいカーブが生まれた。
ワイヤ放電加工で生まれた美しいカーブが空間に映える
ダイニングテーブルの曲線とも呼応する
美しいR加工。

厨房のカラーステンレス壁にも忘れられない出来事がありました。本来、美しいRの出隅は形状加工後にカラー処理を施すのが理想ですが、特注となりコスト的に現実的ではありません。そこでカラー処理済みの板を加工する方法を選びましたが、R部分は熱で変色し大問題に。保健所検査まで2週間という土壇場で、ランニング仲間でもある「ナんでも スぐ コしらえる」でお馴染みのナスコ株式会社の中尾社長に相談すると、水中で電気を通して切断する、ワイヤ放電加工を提案いただき、無事焼けのない美しい曲線が実現しました。

この空間づくりにご協力いただいた皆様。
匠の技と人とのご縁が、この空間を支えてくれました。

濱内工務店

濱内工務店 QRコード

ナスコ株式会社

ナスコ株式会社 QRコード

丸岡材木店

丸岡材木店 QRコード

AFJ株式会社

AFJ株式会社 QRコード

天井には奈良県産の吉野杉を採用しました。丸岡材木店さんより仕入れ、仕上げに塗装を施しているため木肌は見えにくいですが、その香りと長い年月をかけて育まれてきた物語に価値を感じ選びました。吉野杉は数百年にわたり酒樽の材料として日本の酒文化を支え、灘や伏見、伊丹などの酒造りを陰で支えてきました。ヨーロッパでオーク樽がワインを育ててきたように、日本では吉野杉が酒を支えてきました。異なる文化でありながら「木が酒を支えてきた」という共通の物語を、この空間の中で静かに重ね合わせています。

200年の歴史を刻む柱梁。庭の緑を映し込む艶やかなタイル。目地のないカラーステンレス。吉野杉が宿す香りと物語。ウォールナットの温もり。それぞれが主張するのではなく、互いを引き立て合い、響き合うことで、一つの豊かな時間が生まれます。

私たちは、この建築を単なるリノベーションではなく、
200年の歴史と現代の感性、日本とドイツそれぞれの酒文化が
静かに重なり合う場として設計しました。

HAUSMESSE — ドイツワイン試飲会

毎年春と秋には、ヘレンベルガーホーフ恒例のドイツワイン試飲会「ハウスメッセ」が開催されます。次回は10月17日(土)から19日(月)までの3日間。50種類以上のドイツワインを自由に試飲することができます。近年、地球温暖化は世界中のワイン産地に深刻な影響を及ぼしていますが、もともと冷涼な気候であったドイツではブドウがより安定して成熟するようになり、世界的な評価も高まっているそうです。ぜひ一度、200年の歴史を刻む建築と美しい庭園、世界が注目するドイツワインが織りなす豊かな時間を体感してください。

株式会社 Horibe Associates

HERRENBERGER TOR PROJECT REPORT — 株式会社 Horibe Associates

【NEWS】
2026/2/24 一棟貸しヴィラ「private villa ten-KUMANO-」がASIA DESIGN PRIZE 2026にてGRAND PRIZEを受賞しました!
2026/1/10 toolbox共同開発 「天井スリットファン」が累計販売台数300台を超えました!←NEW!
2023/8/12 初の著書「建築設計のデジタル道具箱」が学芸出版社より出版されました。


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Philosophy

Philosophy

建築はそれ自身の成り立ちとは無関係に
完成と同時にその周囲の人々や街並み、環境にまで大きく影響を与える存在です。
そして大切に使われているか否かその場所に馴染んでいるか否かに関わらず
何十年もその土地に存在し続けます。

デザインだけでなく、機能だけでもない、建築に関わる様々な物事にこだわり続け
何十年も人々に愛され、人々を守り、色褪せない建築
それが私たちの求める建築のあり方です。

Once created, architecture has significant influence on townscape,
surrounding people as well as the environment, regardless of its background.
It will remain on that ground for decades
whether it blends into the location or not, or if it’s treasured.

No just design or capabilities, but focus on various architectural essence.
Timeless longevity endeared for years, and guarding people’s lives…
this is the concept we pursue.

堀部圭一

堀部圭一

Keiichi Horibe

一級建築士
一級建築施工管理技士

堀部直子

堀部直子

Naoko Horibe

一級建築士
建築士会正会員
近畿大学非常勤講師
大和大学非常勤講師

Contact

Contact

Horibe Associates co., ltd.

大 阪 569-1144 大阪府高槻市大畑町16-12 HAビル 2階
TEL. 072 691 8075
東 京 134-0015 東京都江戸川区西瑞江4-16-6 203
Mail info@horibeassociates.com

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